公務員の副業解禁の話題が聞こえてくるようになっています。
副業への関心が高まっている公務員が増えてきてもいます。
ただ副業が解禁されるまでは、公務員はネットワークビジネスには慎重になったほうが賢明です。
ばれるおそれが大きいので、割に合わないからです。
公務員とネットワークビジネス
現状では公務員とネットワークビジネスの相性は良くありません。
公務員は副業が制限されているため、副業をしていることがばれると懲戒処分の対象となるからです。
公務員の副業制限とネットワークビジネス
公務員は副業が制限されています。
国家公務員も地方公務員も、それぞれ法律で副業が制限されています(国家公務員法第103条・第104条、地方公務員法第38条)。
法律によって、公務員は自ら営利企業を営むことが原則禁止されています。
自ら営利企業を営むことに該当するか否かの判断にあたっては、行為の反復継続性と事業としての実態があることが重視されます。
ネットワークビジネスは継続反復的に収益を得る意図が明らかですし、ビジネスの実態も認められますので、自ら営利企業を営むことに該当します。
公務員にとってネットワークビジネスは危険な副業
確かに国家公務員は人事院の承認を、地方公務員は任命権者の許可を得ることで副業することもできます。
しかし、承認または許可については、基準が定められており、ネットワークビジネスがこの基準を満たすことはできないことがほとんどです。
したがって、承認または許可を得てネットワークビジネスをすることはほとんどできません。
承認または許可を得ずにネットワークビジネスをすれば、副業制限違反として懲戒処分の対象となります(国家公務員法第82条、地方公務員法第29条)。
公務員にとってネットワークビジネスは危険な副業なのです。
公務員がネットワークビジネスの会員になったら
厳密にいえば、公務員はネットワークビジネスと契約して会員になった時点で副業制限違反になります。
事業の反復継続性は当然認められるでしょう。
収益目的で契約を結んで会員になるのですから、ビジネスの実態もあります。
結果的に利益が出なかったとしても、収益を得る意図が認められる以上、自ら営利企業を営むことになるのです。
また、商品の格安購入が目的だったとしても、販売できる会員になったのであれば、副業制限違反にあたるおそれがあります。
特に、商品購入しかできない会員が用意されている場合には違反行為と判断されるおそれが大きくなります。
公務員がネットワークビジネスの会員になった時点で副業制限違反となるおそれがあり、懲戒処分の対象となるおそれもあるのです。
公務員のネットワークビジネスはばれやすい
公務員のネットワークビジネスが難しい理由として、ばれやすいことも挙げられます。
通報でネットワークビジネスがばれる
ネットワークビジネスは匿名ではできません。
契約の相手方に勧誘者の氏名等を告げなければならないことが法定されていますし、そもそも人的なネットワークを前提とするビジネスモデルですから、勧誘者がどのような人かは契約者は知っているでしょう。
勧誘者が公務員だと知った人の何割かはこう考えるでしょう。
「公務員がネットワークビジネスをしてもいいの?」
そうした人の何割かは公務員が副業をしていいのかどうかを調べるでしょう。
何割かは役所に直接問い合わせ、通報するのです。
周囲の通報からネットワークビジネスがばれる
近所だったり、同僚だったり、周囲の通報からネットワークビジネスがばれることがあります。
周囲は意外といろいろなことを知っています。
しかも、野次馬的に事情を調べたり、推測を重ねたりして、シナリオを作り上げることがあります。
半ばあてずっぽうで通報することもあります。
家族からネットワークビジネスがばれる
このほかで意外と多いのが心配した家族が役所に相談してばれてしまうことがあります。
副業ができないはずの公務員がネットワークビジネスをしていると、家族が心配になって役所に相談してしまうのです。
悪気はないのでしょうが、結果的に最悪の事態になってしまいます。
その他でネットワークビジネスがばれる
申告漏れや税額変更など税金関係からばれることもあります。
行動の変化からばれることがもあります。
離席の多さや頻繁な私用電話・私用メールなど、行動の変化に周囲が気づいてしまうようです。
また、以前より高価なものを身に付けているなど、生活の変化からばれることもあります。
これらはネットワークビジネスに限ったことではありませんが、副業をしていることがばれる要因は少なくないのです。
ネットワークビジネスがばれたときの懲戒処分
公務員のネットワークビジネスばれれば、副業制限違反として懲戒処分の対象となります(国家公務員法第82条、地方公務員法第29条)。
懲戒処分の内容については、事案ごとの事情を勘案して決められます。
国家公務員のネットワークビジネスにかかる懲戒処分
人事院の「懲戒処分の指針について」は、人事院の承認を得ない副業をした場合の懲戒処分は、減給または戒告を標準例としています。
これに個別の事情を勘案して処分の内容が決まることになります。
ネットワークビジネスを長期間続けていたとか、、利益が大きかったとか、違反の程度が大きいと判断されるとより重い処分になります。
逆にネットワークビジネスを止める、利益分を寄付するなど、反省していると判断される場合にはより軽い処分になるでしょう。
ただし、ネットワークビジネスは役所に好意的には見られていないこともあり、処分が軽くなりにくい面があります。
地方公務員のネットワークビジネスにかかる懲戒処分
地方公務員の懲戒処分については、各自治体の規程・通達等で定められます。
東京都内や周辺の自治体では標準例がやや重いものとなっていることがありますが、多くのの自治体で国家公務員の懲戒処分と同じになっています。
具体的な内容については、各自治体の例規集等で確認する必要があります。
役所とネットワークビジネス
ネットワークビジネスは役所に好意的にみられていません。
ネットワークビジネスはマルチ商法と同一視されていることが多いのです。
いくら、マルチ商法と違ってネットワークビジネスは合法だ、と意見しても、多くの場合そのようには見られません。
ネットワークビジネスとは
ネットワークビジネスは、人的なつながりを利用して、物品の販売または役務の提供を行うものです。
このうち、一定の要件を満たす販売形態が連鎖販売取引と定義されています。
連鎖販売取引は特定商取引法で厳しく規制されており、規制に反すると厳しい罰則が科されることがあります。
ネットワークビジネスとMLMとマルチ商法
ネットワークビジネスはMLM(Multi-Level Marketing:マルチレベルマーケティング)という新しい手法を使った商取引形態として紹介されることがあります。
このMLMの訳語がマルチ商法です。
MLMが70年代に日本に持ち込まれたときにあてられた訳語がマルチ商法です。
ネットワークビジネスはマルチ商法の手法を使った商取引形態ということになります。
ネットワークビジネスとマルチ商法は切り離しがたい結びつきがあるのです。
好意的にみられないネットワークビジネス
ネットワークビジネスは、厳しい法規制の下にあること、マルチ商法との結びつきが強いことなど、役所に好まれない要素が多いのです。
副業が制限されているので、役所はただでさえ副業に対してネガティブなイメージを持っています。
それに規制されているマルチ商法に近い副業という要素が加わるのですから、好意的に見ようとはしなくなります。
実際のビジネスモデルがどうあれ、役所はネットワークビジネスをネガティブに評価します。
公務員はネットワークビジネスには慎重になったほうがいい
公務員にとってネットワークビジネスは危険な副業です。
ばれやすいうえに懲戒処分も重くなるおそれが大きいからです。
人とのつながりが前提のビジネスなのでばれないようにすることは困難ですし、けっして好意的にみられないビジネス形態です。
公務員の副業に適しているとはいいがたいものです。